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十一月九日

  • takashimorijiri
  • 2022年11月9日
  • 読了時間: 1分

更新日:2022年11月11日

労働からの帰り道、車を運転していた。車を運転しているあいだ、何もしていなかった。車に運転させられていたからだ。ただただその力学に身を任せていた。

フロントガラスに一枚の葉がはりついた。その葉は目の前で雄弁に語りはじめた。しかしそれはことばではなかった。ぼくはその葉のことを何も考えなかった。その葉がどんな種類の葉なのか。どこから来たのか。その葉は美しかった。赤を基調として黄色と茶色が斑になっており、少しの黒がぽつぽつ。ところどころ虫に食われて穴があいており、それでも葉の形ははっきりと保たれていた。

家について、ふとその葉を手元に置いておこうと考えた。じっくりそれをながめたかったのだ。きょうの出会いを忘れたくなかったのだ。でもこれは後から書いた考えだ。

車をとめるためにちょっと目を話した隙に、葉はどこかへいってしまった。あたりを探しても見つからなかった。

 
 

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